「海馬/吉村昭」を読んだ
今まで読んだことがなかった吉村昭。会社の同僚Kmtくんに借りて初めて読んでみた「海馬」(新潮文庫)について。
これ、動物や自然を描きながら、彼らと生きる人々を描いた7つの短編集。それぞれこんな話。
●「闇にひらめく <鰻>」:
鰻漁にのめり込み、やがて鰻屋を営むようになった"昌平"は、お店を手伝ってもらっている"桂子"に惚れられる。ただ、昌平には妻と間男を刺した前科があり、それを隠しており桂子への恋心を抑えようとする...。あのカンヌ映画祭受賞作「うなぎ」の原作。
●「研がれた角 <闘牛>」:
宇和島で牛を飼う"富太郎"。その息子の"隆夫"、家事を手伝っている"加代"と一緒に、闘牛のために牛を鍛錬し、育てている...。
●「蛍の舞い <蛍>」:
"俊一郎"は、妻の"峰子"が部下の"藤川"との浮気を知り、みっともないと会社を辞め、離婚し、故郷で姉と暮らすようになる。そこで蛍の人工飼育に興味を持ち、蛍の飼育に取り憑かれていくと、姉に茶道を習っている"宮子"との縁談が持ち上がってくる...。
●「鴨 <鴨>」:
囮の鴨を育て、それで鴨猟をする猟師親子、"綾次郎"と息子の"民雄"。川で入水自殺しようとしていた"久子"を引き止め、親子は家に連れていくと、久子はなんでもするから家に置いてくれという...。
●「銃を置く <熊>」:
羆が人間を7名を惨殺した北海道三毛別羆事件を5歳のときに目撃した"弥一郎"。猟師になって67歳。羆を通算で100頭射止めことで、熊猟からの引退を決意するが...。
●「凍った眼 <錦鯉>」:
錦鯉の養殖業を営む"島岡"とその息子"浩一"親子。顧客の"丹野"が錦鯉を飼っていた床下の水槽で溺死し、その錦鯉を引き取ることになった...。
●「海馬 <トド>」:
オホーツクの羅臼で漁業に被害をもたらすトドを捕る26歳のハンター"卓夫"とベテラン船頭の"鳴尾"。卓夫の師匠である"梅太郎"の孫の"由起子"が東京に行ったもののレイプされて羅臼に戻ってきた...。
天然の鰻漁、闘牛、蛍の人工飼育、鴨猟、熊猟、そしてトド撃ち...そんな動物達に打ち込む男達が描かれていて、それぞれの男達が消えない過去やしがらみや心の重みを抱えている。猟や飼育など特殊な仕事の細部が丹念に書いているのが臨場感あって面白かったし、どの男達に幸せが待っていそうな結末を迎えるのがなんかよかった。
いままで読んでこなかった吉村昭、ほかの小説も読んでみよう。
cf. 吉村昭 読破 List
- 海馬 (1989)
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