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Thursday, February 13, 2020

「罪の轍/奥田英朗」を読んだ

Hideookuda_tsuminowadachi 新刊がなく、最近ご無沙汰の奥田英朗。ひさしぶりに世田谷中央図書館で借りた「罪の轍」(新潮社)について。
 こんなあらすじ。東京オリンピックを翌年に控えた昭和38年。北海道礼文島で暮らす漁師手伝いの青年"宇野寛治"は、窃盗事件の捜査から逃れるために身ひとつで東京に向かう。東京に行きさえすれば、明るい未来が待っていると信じていたのだ。そんな中、東京浅草で男児誘拐事件が発生し、日本中を恐怖と怒りの渦に叩き込んだ。警視庁捜査一課強行班係に所属する刑事"落合昌夫"は、南千住で起きた強盗殺人事件の捜査中に、子供たちから「莫迦」と呼ばれていた北国訛りの青年の噂を聞きつける...。
 これ、東京オリンピックの前年の実際に起きた「吉展ちゃん誘拐殺人事件」をモデルにした犯罪小説。オリンピック開催に沸く世間から取り残された孤独な男と、それを追う者たちの攻防が描かれているんだけど、ある意味、現実に忠実かつリアリティーもって書かれているため、派手なギミックやトリックは一切なく正直冗長に感じるところもあった。それでも、礼文島の寂れた昆布漁、幼小期に継父から強いられた当たり屋、それが起こした脳機能障害とトラウマはえげつないし、貧乏がもたらす窃盗、幼児誘拐と、山谷、暴力団といった環境が、圧倒的な筆力で書かれている。いやー読み応えがあった。
 それにしても、「無理」、「邪魔」、「最悪」、「オリンピックの身代金」、「沈黙の街で」などなど奥田英朗が書く犯罪小説はやっぱりいいです。

cf. 奥田英朗 読破 List
- B型陳情団 (1990)
- ウランバーナの森 (1997)
- 最悪 (1999)
- 邪魔 (2001)
- 東京物語 (2001)
- イン・ザ・プール (2002)
- 延長戦に入りました (2002)
- マドンナ (2002)
- 真夜中のマーチ (2003)
- 空中ブランコ (2004)
- サウスバウンド (2005)
- ララピポ (2005)
- ガール (2006)
- 町長選挙 (2006)
- 家日和 (2007)
- オリンピックの身代金 (2008)
- 用もないのに (2009)
- 無理 (2009)
- 聖なる夜に君は/奥田英朗・角田光代・大崎善生・島本理生・盛田隆二・蓮見圭一(2009)
- 純平、考え直せ (2011)
- 我が家の問題 (2011)
- あの日、君と Boys/ナツイチ制作委員会(編)・伊坂幸太郎(著)・井上荒野(著)・奥田英朗(著)・佐川光晴(著)・中村航(著)・西加奈子(著)・柳広司(著)・山本幸久(著) (2012)
- 短編工場/浅田次郎・伊坂幸太郎・石田衣良・荻原浩・奥田英朗・乙一・熊谷達也・桜木紫乃・桜庭一樹・道尾秀介・宮部みゆき・村山由佳 (2012)
- 噂の女 (2012)
- 沈黙の町で (2013)
- 田舎でロックンロール (2014)
- ナオミとカナコ (2014)
- 我が家のヒミツ (2015)
- 向田理髪店 (2016)
- ヴァラエティ (2016)
- 恋愛仮免中/奥田英朗・窪美澄・荻原浩・原田マハ・中江有里 (2017)
- 罪の轍 (2019)

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