「錨を上げよ <一> 出航篇・<二> 座礁篇・<三> 漂流篇・<四> 抜錨篇/百田尚樹」を読んだ
たまに読みたくなる百田尚樹の小説。世田谷中央図書館で借りてに読んでみた「錨を上げよ <一> 出航篇」、「錨を上げよ <二> 座礁篇」、「錨を上げよ <三> 漂流篇」、「錨を上げよ <四> 抜錨篇」(幻冬舎)について。
こんなあらすじ。戦争が終わってちょうど十年目、昭和30年。空襲の跡が残る大阪の下町に生まれた"作田又三"は祖母と両親、3人の弟という家族の中で、すくすくと悪がきとして育つ。口が悪く、腕っおぷしが強く、曲がったことが嫌いな又三は、中学ではろくに勉強しなかったため、不良の集まる商業高校に進学し、高校でも枠にはまらずに暴れまわる...。
これ、戦後から大学紛争、バブル経済の入り口まで激動の昭和を駆け抜ける、百田尚樹の自伝っぽいピカレスク小説。このピカレスク小説とは悪漢小説とのことで、下層の視点から社会の欺瞞をとらえた風刺にあふれた小説とのこと。個性的でエネルギッシュな又三は恋多きトラブルメーカーで、まわりの理解がないまま、何度も何度も大きな失敗を犯していく。「ここでそれを言うな!」とか、「あ、それやっちゃダメだろ!」と読んでるこっちが非常に疲れる。さらに疲れるのは、又三が心の中で葛藤する独白があまりに長くて、哲学っぽくて、才能とは?、運命とは?、愛とは?、生きるとは?と悩みまくり、ブレまくりながらも、自らの持論を展開しまくる。このあたりは"論客"百田尚樹の真骨頂だと思う。
凄ーくつかれるけど、読まずにはいられない長編だった。
cf. 百田尚樹 読破 List
- 永遠の0(ゼロ) (2006)
- ボックス! (2008)
- 風の中のマリア (2009)
- モンスター (2010)
- 影法師 (2010)
- 輝く夜 (2010)
- 錨を上げよ <一> 出航篇 (2010)
- 錨を上げよ <二> 座礁篇 (2010)
- 錨を上げよ <三> 漂流篇 (2010)
- 錨を上げよ <四> 抜錨篇 (2010)
- 幸福な生活 (2011)
- プリズム (2011)
- 海賊とよばれた男 (2012)
- 「黄金のバンタム」を破った男 (2012)
- 夢を売る男 (2013)
- フォルトゥナの瞳 (2014)
- 殉愛 (2014)
- カエルの楽園 (2016)
- 幻庵 (2016)
- 夏の騎士 (2019)
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