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Tuesday, July 21, 2020

「八月の光・あとかた/朽木祥」を読んだ

Shawkuzki_hachigatsunohikari ヒロシマ原爆投下を描いた朽木祥の「八月の光・あとかた」(小学館文庫)について。
 これ、「八月の光」として収録されていた「雛の顔」、「石の記憶」、「水の緘黙」に加え、文庫化にあたって、「あとかた」として「銀杏のお重」、「三つ目の橋」の2編が新たに書き下ろされたもの。そろぞれこんな話。
 ・「雛の顔」:
 "昭子"は、三滝駅を利用して女学校に通っている。ある日の朝早くに、母の"真知子"が、出生している父"忠"の陰膳が落ちたために、勤労奉仕は行かないと言い出す...。
 ・「石の記憶」:
 父の"清司"が乗った船が航行中に撃沈されたという知らせが届いたが、"光子"は清司が亡くなったことを信じることができずにいた。光子は清司や母の"テルノ"と地御前の海に出かけたことを思い起こす...。
 ・「水の緘黙」:
 炎が襲ってきたために、"僕"は、子どもや女性、お年寄りを見捨てて、1人で逃げた。気がつくと、川べりに佇んでおり、焼けただれた人々が水際に並んで座っているのが見えた...。
 ・「銀杏のお重」:
 ある日、中西家の長男である"和俊"が、迫田家の"清子"を見初め、彼女に縁談が持ちかけられた。しかし、清子がまだ女学校の2年生であるからという口実で、迫田家は縁談を断る...。
 ・「三つ目の橋」:
 "私"は、原爆によって父親と弟を失い、母親も原爆症によって亡くなった。私は橋の欄干にもたれながら、自分が一番嫌いな川である元安川を見下ろしていた...。

 原爆のピカという一瞬の光があの場所にいた人々の時間を飲み込み、生き残った人々が苦しみと悲しみの中でどう生き抜いたかを描いた5つの短編がこれ。個人的によかったのは、広島平和記念資料館に展示され、原爆の悲惨さを伝える"白い石段の影"にまつわる物語「石の記憶」と、苦しむ人を助けられずに一人逃げた少年の自責の念が救われるまでの物語「水の緘黙」。戦争記録としてだけではない話ばかりだった。

cf. 朽木祥 読破 List
- 八月の光・あとかた (2015)

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