「いけない/道尾秀介」を読んだ
ほぼすべて完読している道尾秀介。で、世田谷中央図書館で借りて読んだ「いけない」(文藝春秋)について。
これ、4つの章からなるミステリー小説。つながりながら進んでいくんだけど、それぞれこんなあらすじ。
●第1章「弓投げの崖を見てはいけない」:
白沢市と蝦蟇倉市を結ぶ白蝦蟇シーラインの南に"弓投げの崖"がある。その先の蝦蟇倉東トンネルを車で通っていた"安見邦夫"は、トンネル出口で急旋回した車を回避して左の壁に激突してしまった...。
●第2章「その話を聞かせてはいけない」:
5年前に中国から蝦蟇倉市に来た小学生の"馬珂"。名前が「バカ」と読めるから、保育所や小学校で馬鹿にされて友達もいなかった。ある日、珂は赤青えんぴつを万引きしようと古関文具店に入った...。
●第3章「絵の謎に気づいてはいけない」:
十王還命会の幹部"宮下志穂"が自室マンションで死亡した。刑事の"竹梨"は新米の"水元"と組んで捜査にあたる。宮下は3日前から無断欠勤しており、心配した十王還命会支部長の"守谷巧"が宮下の部屋を訪ねたが、鍵が掛かっていた。そこで、マンションの管理会社社長"中川徹"に鍵を開けてもらい、彼女の死体を発見した...。
●終章「街の平和を信じてはいけない」:
事故で視力を失った"安見邦夫"は自分のやったことを告白文につづり、竹梨刑事に渡して自殺するつもりだった。その竹梨もまた罪を抱えていた。そんな中、中国から来た少年"馬珂"に、邦夫は生きる希望を与えられ、死ぬことを思いとどまる...。
これ、架空の蝦蟇倉市を舞台に時間をかけて連鎖していく殺人を描いたミステリー。第1章「弓投げの崖を見てはいけない」は、「晴れた日は謎を追って がまくら市事件/伊坂幸太郎・大山誠一郎・伯方雪日・福田栄一・道尾秀介」が初出で、読んだことがあるんだけど、これを膨らませている。犯人の意外性、犯行トリック、伏線の巧妙さ、そしてどんでん返しとほんと全体が巧妙なんだけど、中でも各章の最終ページをめくると現れる地図や写真でその意味が解った瞬間にたまらない世界がまっている。
やっぱり道尾秀介はうまい作家だと思う。堪能しました。
cf. 道尾秀介 読破 List
- 背の眼 (2005)
- 向日葵の咲かない夏 (2005)
- 骸の爪 (2006)
- シャドウ (2006)
- 片眼の猿 -One-eyed monkeys- (2007)
- ソロモンの犬 (2007)
- ラットマン (2008)
- カラスの親指 by rule of CROW'S thumb (2008)
- 鬼の跫音 (2009)
- 龍神の雨 (2009)
- 花と流れ星 (2009)
- 球体の蛇 (2009)
- 光媒の花 (2010)
- 月の恋人-Moon Lovers- (2010)
- 月と蟹 (2010)
- 晴れた日は謎を追って がまくら市事件/伊坂幸太郎・大山誠一郎・伯方雪日・福田栄一・道尾秀介 (2010)
- カササギたちの四季 (2011)
- 短編工場/浅田次郎・伊坂幸太郎・石田衣良・荻原浩・奥田英朗・乙一・熊谷達也・桜木紫乃・桜庭一樹・道尾秀介・宮部みゆき・村山由佳 (2012)
- 水の柩 (2011)
- 光 (2012)
- ノエル-a story of stories- (2012)
- 笑うハーレキン (2013)
- 鏡の花 (2013)
- 貘の檻 (2014)
- 緑色のうさぎの話/道尾秀介(作)・半崎信朗(絵) (2014)
- 透明カメレオン (2015)
- スタフ staph (2016)
- サーモン・キャッチャー the Novel (2016)
- 満月の泥枕 (2017)
- 風神の手 (2018)
- スケルトン・キー (2018)
- いけない (2019)
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