2020年を振り返る●Readings編●
2020年を振り返える。続いては読みまくった"Readings編"を。
2020年はほぼ在宅勤務で通勤時間がまったくなくなり、本を読む時間が少なかったと思う。2019年は80冊を1年間で読んだけど、2020年は69冊。内訳は小説が40冊、それ以外が20冊。確かに減ってる。では、2020年に読んだ本の中で、個人的に特にひっかかった5冊を挙げてみる。
まず1冊目は、吉村昭の「高熱隧道」。昭和11年8月着工、昭和15年11月完工した黒部第三発電所。この発電所のために、嶮岨な峡谷で岩盤最高温度165℃という高熱地帯に隧道(トンネル)を掘鑿する難工事が行われた。高熱と雪崩という大自然の猛威に立ち向かい、トンネル貫通にとり憑かれた男達の執念が描かれているんだけど、あまりの極限状況にほんとにあった話とは思えない。昭和42年の本だけど、今読んでもすさまじい記録文学だった。
2冊目は、奥田英朗の「罪の轍」。これ、東京オリンピックの前年の実際に起きた「吉展ちゃん誘拐殺人事件」をモデルにした犯罪小説。オリンピック開催に沸く世間から取り残された孤独な男とそれを追う者たちの攻防が描かれているんだけど、貧乏がもたらす窃盗、幼児誘拐と、山谷、暴力団といった環境が圧倒的な筆力が凄かった。
3冊目は上下巻ある原田マハの「風神雷神 Juppiter,Aeolus」。織田信長と狩野永徳にその才能を見出された天才少年絵師・俵屋宗達が、天正遣欧少年使節ともにヴァチカンへ旅し、そこでローマ法王に謁見し、イタリア・ルネサンスを体験するという壮大な冒険物語がこれ。荒唐無稽な物語なんだけどやたら楽しい。いやー読み応えありました。
4冊目と5冊目は湯活を続ける中で出会った本。まずは高円寺の小杉湯番頭で、イラストレーターで、設計事務所出身の塩谷歩波が建築の図法であるアイソメトリック手法を用い、銭湯の建物内部を精密な俯瞰図で描いた「銭湯図解」。銭湯の浴場やサウナや脱衣所や露天風呂の位置、浴槽の高さや深さ、シャワーやカランの位置などなどを実測し、細部を写真に撮り、それを組み立て、水彩画で描いているんだけど、そこで体を洗う人や湯船につかる人の表情やしぐさも描かれているため、銭湯の温かい雰囲気まで伝わってくる。
そして、「デザイナーズ銭湯」の多くを手がけてきた銭湯建築士・今井健太郎が刊行した「銭湯空間」。自分も行ったことがある銭湯を思い出しながらこの本を読むと、懐かしくて新しい空間がどんなアイデアのもとに生まれるのか、どんな仕掛けがあって、店主はどんな思いでリニューアルしたのかがよく伝わってきた。いつか今井作品の銭湯はすべて行ってみたい。
2021年もぼちぼち世田谷中央図書館に通って、いろいろ感じたり学んだりできればと思います。
cf.
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