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Tuesday, March 02, 2021

「<あの絵>のまえで/原田マハ」を読んだ

Mahaharada_anoenomaede ちょいちょい読んでる原田マハ。世田谷区中央図書館で借りて読んでみた「<あの絵>のまえで」(幻冬舎)について。
 これ、アートと出会うごくふつうの人々の6つの物語。それぞれこんなあらすじ。
 ●「ハッピー・バースデー」:
 夏花は、一流企業を目指しての就職活動に敗れ、希望とは異なる車の部品メーカーに努めていた。しかし、友人がプレゼントしてくれた手帳の表紙絵 "ゴッホの<ドービニーの庭>"を思い出し、地元広島の小さな美術館の嘱託に転職する...。それぞれの誕生日に忘れられないエピソードがあった。
 ●「窓辺の小鳥たち」:
 中学以来の恋人なっしーと長年同棲生活をしていた詩帆は、ギター奏者の夢を叶えるため海外へ飛び立とうとする彼との別れを受け入れらない。それでも、以前2人で見た大原美術館の"ピカソの<鳥籠>"を見た時の恋人なっしーの言葉、「鳥籠の中に鳥はおらず、窓辺に止まっていて自由なのだ」を思い出す...。
 ●「檸檬」:
 高校の美術部で親切な滝川先輩に淡い恋心を抱いたあかねは、2人で絵画コンクール公募作品を描いたときに、嫉妬に駆られた滝川に自分の描いていたレモンの静物画に×印をつけられ、ショックのため絵から遠ざかってしまった。そんなある日、駅のプラットホームにカンバスバッグとレモンを手にした女子高生を目にする。衝動的に彼女を追いかけたが、女子高生が向かったのは箱根のポーラ美術館だった...。
 ●「豊穣」:
 亜衣は高校を卒業し作家を目指すが成功できず、今では使ってもいない商品を誉める「さくらレビューワー」で生活していた。ある日アパートの隣室に越してきたスガワラというおばあさんと知り合いになる。一緒に鍋を囲み、家族のようなつきあいとなるが、スガワラさんは豊田市美術館で「専門性の高い仕事」をしているとのことだった...。
 ●「聖夜」:
 夫婦は心臓疾患を持って生まれた息子に、誕生日がクリスマスイブだったので、聖夜からその名前を誠也とつけた。誠也はすくすくと育ち、登山に夢中になる大学生になったが、親の反対を押し切り、初めての冬山登山に挑戦し、命をなくしてしまう。生前母親が誠也の20歳の誕生日12月24日にプレゼントしたのが"東山魁夷"の複製画<白馬の森>だった....。
 ●「さざなみ」:
 職場の上司や先輩のパワハラに悩まされ、子宮筋腫の手術を受けたあおいは、入院中偶然テレビで香川県直島の地中美術館の中継を見た。特に"モネの<睡蓮>"の圧倒的な迫力に感激し、退院後すぐにあおいは直島へ出かけた。何時間も睡蓮の絵から吹き来る風とさざなみに洗われていく...。
 
 以前に読んだ「常設展示室 Permanent Collection」のように、美術館に出かけ、そのアートに出会い、勇気をもらい、また前に進むというささやかな短編集がこれ。美術館は敷居が高いイメージかもしれないけど、どのお話もちょっと出かけてみたくなる。ちなみに登場する絵画はこれ。
 ●「ドービニーの庭」フィンセント・ファン・ゴッホ@ひろしま美術館 (from「ハッピー・バースデー」)
 ●「鳥籠」ピカソ・パブロ@大原美術館 (from「窓辺の小鳥たち」)
 ●「砂糖壺、梨とテーブルクロス」ポール・セザンヌ@ポーラ美術館 (from「檸檬」)
 ●「オイゲニア・プリマフェージの肖像」グスタフ・クリムト@豊田市美術館 (from「豊饒」)
 ●「白馬の森」東山魁夷@長野県信濃美術館・東山魁夷館 (from「聖夜」)
 ●「睡蓮-シリーズ5点」クロード・モネ@地中美術館 (from「さざなみ」)
 
 ちょっと息詰まった時にアートが救いとなる。トゲトゲしていた心に優しく沁みる短編集でした。
 
cf. 原田マハ 読破 List
カフーを待ちわびて (2006)
一分間だけ (2007)
ランウェイ☆ビート (2008)
さいはての彼女 (2008)
キネマの神様 (2008)
花々 (2009)
翼をください (2009)
本日は、お日柄もよく (2010)
星がひとつほしいとの祈り (2010)
風のマジム (2010)
まぐだら屋のマリア (2011)
永遠をさがしに (2011)
いと-運命の子犬-/原田マハ(文)・秋元良平(写真) (2011)
小説 星守る犬/原田マハ(著)・村上たかし(原作) (2011)
楽園のカンヴァス (2012)
旅宿おかえり (2012)
生きるぼくら (2012)
いつも一緒に -犬と作家のものがたり-/新潮文庫編集部(編)・檀ふみ・小路幸也・遠藤周作・角野栄子・伊丹十三・鷺沢萠・伊集院静・江國香織・幸田文・久世光彦・小川洋子・佐藤愛子・糸井重里・原田マハ・島尾敏雄・馳星周・小澤征良・山崎豊子・唯川恵(2013)
ジヴェルニーの食卓 (2013)
総理の夫 First Gentleman (2013)
翔ぶ少女 (2014)
太陽の棘 (2014)
奇跡の人 The Miracle Worker (2014)
あなたは、誰かの大切な人 (2014)
異邦人(いりびと) (2015)
モダン (2015)
ロマンシエ (2015)
暗幕のゲルニカ (2016)
デトロイト美術館の奇跡 DIA:A Portrail of Life (2016)
リーチ先生 (2016)
恋愛仮免中/奥田英朗・窪美澄・荻原浩・原田マハ・中江有里 (2017)
サロメ (2017)
アノニム (2017)
たゆたえども沈まず (2017)
いちまいの絵 生きているうちに見るべき名画 (2017)
スイート・ホーム (2018)
フーテンのマハ (2018)
常設展示室 Permanent Collection (2018)
美しき愚かものたちのタブロー (2019)
風神雷神 Juppiter,Aeolus (2019)
ハグとナガラ (2020)
- <あの絵>のまえで (2020)

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