「一人称単数/村上春樹」を読んだ
これ、8作からなる短編集。それぞれこんなあらすじ。
●「石のまくらに」:
"僕"は大学時代に、四ツ谷のレストランでバイトをしていた。あるとき同じ職場の年上女性と一夜を共にする。自ら短歌を作っているというその女性は、"僕"の住所に歌集を送ってくれた...。
●「クリーム」:
浪人中だった"ぼく"は、同じピアノ教室に通っていたそんなに親しくない女の子からリサイタルに誘われる。花束を買って山の上のリサイタル会場に行くが、あたりには誰もおらず、鉄の扉で会場は閉まっていた。途方に暮れ、近くの公園に行くと、いつの間にか老人が目の前にいることに気づく...。
●「チャーリー・パーカー・プレイズ・ボサノヴァ」:
大学生の頃にチャーリー・パーカーが1963年に録音したという架空のレコード「チャーリー・パーカー・プレイズ・ボサノヴァ」についてアルバム評を書いた。その15年後、ニューヨークの中古レコード店でそのレコードと再会する...。
●「ウィズ・ザ・ビートルズ With the Beatles」:
高校生の時、"僕"は「With the Beatles」というレコードを持った少女を校舎で見かるが2度と会えず、違う女性と付き合った。ある日彼女の家を訪ねたが、そこには彼女の兄しかいなかった。兄と話すうちに芥川龍之介の「歯車」を朗読してくれと頼まれる...。
●「『ヤクルト・スワローズ詩集』」:
東京ヤクルトスワローズの大ファンである村上春樹のエッセイ。風が吹く神宮球場の一塁側や右翼側の外野席で過ごす時間がいとおしい。
●「謝肉祭(Carnaval)」:
"僕"は、今まで知り合った中でもっとも醜い女性"F*"とコンサート会場で出会う。容姿は醜いけど、好きな音楽は僕と共通しており、特にシューマンの「謝肉祭」を愛していることがわかる。音楽を通じて深く語り合い、2人は意気投合する...。
●「品川猿の告白」:
5年前、一人旅をしていた"僕"は、群馬県の小さな温泉旅館に泊まる。寂れた宿であったが、温泉は思いのほか素晴らしいかった。温泉に浸っていると、年老いた"猿"がガラス戸を開けて風呂場に入ってきて、僕の背中を流してくれるという...。
●「一人称単数」:
気持ちのいい春の夜、めったにスーツを着ない"私"が、違和感を抱えながらスーツ姿で街を歩き始める。いつもとは違うバーで本を読んでいると、中年の女性に「そんなことしていて何か愉しいの?」と声をかけられる。"私"のことを不愉快に思うという彼女は、理不尽に"私"を罵倒してくる...。
この8作の短編集、物語を語る人物はいずれも村上春樹を思わせる男性となっていて、その人生をふりかえって書いているように思えるんだけど、実はすべて作り話。例えば、「スワローズについての詩集を出した」といった虚構がそのまんま自主出版したような気がしてくる。自分的に一番好きなのは「品川猿の告白」。短編集「東京奇譚集」(2005)に収録されている「品川猿」の続編なんだけど、名前を奪われるというどこか現実離れな設定とその不思議な世界がひかれてしまう。ともかくなんかひっかかってしまう短編集です。
cf. 村上春樹 読破 List
- 風の歌を聴け (1979)
- 中国行きのスロウ・ボート (1980)
- カンガルー日和 (1981)
- 象工場のハッピーエンド/村上春樹・安西水丸 (1983)
- 蛍・納屋を焼く・その他の短編 (1984)
- 回転木馬のデッド・ヒート (1985)
- 羊男のクリスマス/村上春樹・佐々木マキ (1985)
- パン屋再襲撃 (1986)
- レキシントンの幽霊 (1986)
- ランゲルハンス島の午後/村上春樹・安西水丸 (1986)
- ノルウェイの森 (1987)
- ダンス・ダンス・ダンス (1988)
- TVピープル (1990)
- 雨天炎天-ギリシャ・トルコ辺境紀行- (1990)
- やがて哀しき外国語 (1994)
- もし僕らのことばがウィスキーであったなら (1997)
- ふわふわ/村上春樹・安西水丸 (1998)
- Mr.and Mrs.Baby and Other Stories-犬の人生/Mark Strand-マーク・ストランド(1998)
- 神の子供たちはみな踊る (1999-2000)
- 海辺のカフカ (2002)
- アフターダーク (2004)
- 東京奇譚集 (2005)
- ふしぎな図書館/村上春樹・佐々木マキ (2005)
- 走ることについて語るときに僕の語ること (2007)
- うずまき猫のみつけかた <新装版> (2008)
- 1Q84 BOOK1 <4月-6月> (2009)
- 1Q84 BOOK2 <7月-9月> (2009)
- 1Q84 BOOK3 <10月-12月> (2010)
- ねむり (2010)
- 夢を見るために毎朝僕は目覚めるのです 村上春樹インタビュー集 1997-2009(2010)
- 村上春樹 雑文集 (2011)
- 1Q84 BOOK1 <4月-6月> 前編(文庫) (2012)
- 1Q84 BOOK1 <4月-6月> 後編(文庫) (2012)
- 1Q84 BOOK2 <7月-9月> 前編(文庫) (2012)
- 1Q84 BOOK2 <7月-9月> 後編(文庫) (2012)
- 1Q84 BOOK3 <10月-12月> 前編(文庫) (2012)
- 1Q84 BOOK3 <10月-12月> 後編(文庫) (2012)
- おおきなかぶ、むずかしいアボカド 村上ラヂオ2/村上春樹・大橋歩 (2011)
- サラダ好きのライオン 村上ラヂオ3/村上春樹・大橋歩 (2012)
- 色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年 (2013)
- 恋しくて-TEN SELECTED LOVE STORIES-/村上春樹(編訳) (2013)
- 女のいない男たち (2014)
- 村上さんのところ/村上春樹・フジモトマサル (2015)
- 職業としての小説家 (2015)
- ラオスにいったい何があるというんですか? 紀行文集 (2015)
- 騎士団長殺し -第1部 顕れるイデア編- (2017)
- 騎士団長殺し -第2部 遷ろうメタファー編- (2017)
- バースデイ・ガール (2017)
- 猫を棄てる -父親について語るとき- (2020)
- 村上T 僕の愛したTシャツたち (2020)
- 一人称単数 (2020)
- 風の歌を聴け (1979)
- 中国行きのスロウ・ボート (1980)
- カンガルー日和 (1981)
- 象工場のハッピーエンド/村上春樹・安西水丸 (1983)
- 蛍・納屋を焼く・その他の短編 (1984)
- 回転木馬のデッド・ヒート (1985)
- 羊男のクリスマス/村上春樹・佐々木マキ (1985)
- パン屋再襲撃 (1986)
- レキシントンの幽霊 (1986)
- ランゲルハンス島の午後/村上春樹・安西水丸 (1986)
- ノルウェイの森 (1987)
- ダンス・ダンス・ダンス (1988)
- TVピープル (1990)
- 雨天炎天-ギリシャ・トルコ辺境紀行- (1990)
- やがて哀しき外国語 (1994)
- もし僕らのことばがウィスキーであったなら (1997)
- ふわふわ/村上春樹・安西水丸 (1998)
- Mr.and Mrs.Baby and Other Stories-犬の人生/Mark Strand-マーク・ストランド(1998)
- 神の子供たちはみな踊る (1999-2000)
- 海辺のカフカ (2002)
- アフターダーク (2004)
- 東京奇譚集 (2005)
- ふしぎな図書館/村上春樹・佐々木マキ (2005)
- 走ることについて語るときに僕の語ること (2007)
- うずまき猫のみつけかた <新装版> (2008)
- 1Q84 BOOK1 <4月-6月> (2009)
- 1Q84 BOOK2 <7月-9月> (2009)
- 1Q84 BOOK3 <10月-12月> (2010)
- ねむり (2010)
- 夢を見るために毎朝僕は目覚めるのです 村上春樹インタビュー集 1997-2009(2010)
- 村上春樹 雑文集 (2011)
- 1Q84 BOOK1 <4月-6月> 前編(文庫) (2012)
- 1Q84 BOOK1 <4月-6月> 後編(文庫) (2012)
- 1Q84 BOOK2 <7月-9月> 前編(文庫) (2012)
- 1Q84 BOOK2 <7月-9月> 後編(文庫) (2012)
- 1Q84 BOOK3 <10月-12月> 前編(文庫) (2012)
- 1Q84 BOOK3 <10月-12月> 後編(文庫) (2012)
- おおきなかぶ、むずかしいアボカド 村上ラヂオ2/村上春樹・大橋歩 (2011)
- サラダ好きのライオン 村上ラヂオ3/村上春樹・大橋歩 (2012)
- 色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年 (2013)
- 恋しくて-TEN SELECTED LOVE STORIES-/村上春樹(編訳) (2013)
- 女のいない男たち (2014)
- 村上さんのところ/村上春樹・フジモトマサル (2015)
- 職業としての小説家 (2015)
- ラオスにいったい何があるというんですか? 紀行文集 (2015)
- 騎士団長殺し -第1部 顕れるイデア編- (2017)
- 騎士団長殺し -第2部 遷ろうメタファー編- (2017)
- バースデイ・ガール (2017)
- 猫を棄てる -父親について語るとき- (2020)
- 村上T 僕の愛したTシャツたち (2020)
- 一人称単数 (2020)
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