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Friday, October 29, 2021

「嵐山光三郎セレクション 安西水丸短篇集 左上の海/安西水丸」を読んだ

Mizumaruanzai_hidariuenoumi 先日観に行った世田谷文学館での「イラストレーター 安西水丸展」。そんな中、世田谷中央図書館で借りて読んでみた安西水丸の「嵐山光三郎セレクション 安西水丸短篇集 左上の海」(中公文庫)について。
 水丸さんが亡くなって7年、彼が遺した数多くの作品から盟友"嵐山光三郎"が選んだ恋愛短篇集がこれ。それぞれこんなあらすじ。
 ●「レモンを描く」:
 銀座の画廊で個展を開くことになった。その案内状にレモンを描くことにするが、レモンの形、レモンの色、それしかないレモンに翻弄される...。
 ●「消えた月」:
 地下1階にある霊安室、吉沢は亡くなった友人佐竹の髭を剃る...。
 ●「柳がゆれる」:
 以前勤めていた建設会社で出会った芦田愛子と不倫を続けていた奥津、彼は急性白血病と診断された...。
 ●「空を見る」:
 湯島天神近くの保育園で働く愛子のアパート、ぼくは週末から仕事をほったらかしてぐだぐだと過ごしていた...。
 ●「ドラキュラ伯の孤独」:
 修平は散歩中、骨董屋で買ったドラキュラ伯の人形を手にして、「吸血鬼にしては可愛い」とつぶやく...。
 ●「ひと冬」:
 代々木公園の路上で出会った誠と加奈子はそれぞれの家族から見放され、貧しくギリギリの生活を続けていた...。
 ●「善仲という自転車」:
 悲運の武将の名前を自転車につけたぼく、ブレーキが止まらなくなったとき、旅芸人一座のメンバーに助けられた...。
 ●「とうもろこし畑を走る」:
 とうもろこしがなる七三郎畑、夜のとうもろこし畑にはおばけが出ると母から聞かされていた...。
 ●「左上の海」:
 文江はよく夢の話をするが、僕は夢の話を聞くのが苦手だった...。
 ●「ボートハウスの夏」:
 赤坂見附から四谷にかけてわずかに残る外堀にあるボートハウス、そこでアルバイトを始めたぼくは七江と出会う...。
 ●「薔薇の葉書」:
 四谷一丁目にあるタナカ理髪店、そこで働く佐和子にぼくは出会った...。
 ●「アマリリス」:
 グリニッジヴィレッジでジャズを聴いた帰り道、雪が降る中、8番街を走るバスでアマリリスを持った女を見かける...。
 
 水丸さんが描く明るいイラストレーション、その後ろにひそむような心象風景を書いた短編集。どれも恋愛を描き、どこか不幸だったら、しずかな別れがあったりする。おだやかなイラストを描きながら、こんな物語を考えていたのかと思うとちょっと意外だった。それにしても水丸が亡くなってもう7年。なんかずっとひっかっかて、忘れられない。
 

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