「インディペンデンス・デイ/原田マハ」を読んだ
茅ヶ崎図書館で借りて読んでみた原田マハの「インディペンデンス・デイ」(PHP研究所)について。
これ、初期の24個の短編小説集。それぞれこんな話。
●「川向こうの駅まで The future over the Bridge」:
地元のK市が嫌で、T川を超えてS区のニコタマあたりに引越した"菜摘"。なんとか引越できたものの、K市に顔を出すとそこに住む父親に再会する...。
●「月とパンケーキ The Moon, Pancakes and Someone Like You」:
両親は離婚、夫とは死別し、子供は死産だった。そんな"真由美"は、毎朝留学時に食べていたパンケーキを作る...。
●「雪の気配 Dreaming at the Bar Counter」:
飲み屋のママである母親の元で育ち、その環境で一生懸命して勉強して、大学入学を機に母から逃げ出した"智香"だったが、フランスに留学してソムリエになった...。
●「真冬の花束 Live Life Until Die」:
担当するクラスでイジメが起きていたが気づかないふりをしてしまった教師の私は、小学生の頃、辛らつないじめを受けていた。そんな中、その生徒"真紀"が自殺未遂した...。
●「ふたりの時計 Let Our Time Move」:
W不倫報道のスキャンダルでテレビ局を退職し、いまは就職活動をしている元キャスターだった"真由加"。忙しく、それまで止まっていた夫との時計が動き出す...。
●「転がる石 A Rolling Stone」:
"真由加"に風水ネイルをしたネイリストの"実花"。彼女は病的なDV彼氏と別れられず、共依存状態から抜け出せずにいた...。
●「いろはに、こんぺいとう A Piece of Memory」:
痴呆になった母と娘と暮らしている医者の"千鶴"。どんどん記憶のピースが無くなっていく母はケアハウスに入所することになった...。
●「誕生日の夜 A Surprise at Birthday Night」:
幼なじみの"梨花"と"雅代"。梨花は華やかで充実した生活だけど、雅代は彼氏もなく、派遣の仕事を続けていた。そんな雅代は誕生日を迎える...。
●「メッセンジャー The Flower Messenger」:
メッセージつきの花束を配達する花屋に、毎月「ごめん」のメッセージつきで花束を注文する客がいた...。
●「バーバーみらい Slight Light of Tomorrow」:
大手出版社からのデビューを夢見る同人誌漫画家の私は、引きこもって暮らしていた。ある日近所のバーバーみらいで
顔剃りと散髪をしてもらうことに...。
●「この地面から Salt on the Earth」:
漫画家になると言って家を出たがバイトして生活するだけで精一杯の"カコ"。あるときに自分の祖母がモデルになって
いる漫画「バーバーみらい」を知る...。
●「魔法使いの涙 Sweet Wizard in the Park」:
夫と共に越してきた場所になじめず、友達もできない私は、公園で清掃夫のおじいさんに出会う。おじいさんの話す
物語に、乱暴な娘を落ち着くようになった...。
●「名もない星座 TM312」:
清掃夫のおじいさんの孫娘"たまき"。児童文学コンクールに入賞して本を出した直後に筋ジストロフィーで倒れ、
入院生活していた...。
●「お宿かみわら Paper and Straw」:
夫の"志郎"と一緒に「かみわら」という1日1組の客しかとらない宿を運営していた"奈緒"。しかし彼女の体調が悪くなり宿を閉めることになった...。
●「空っぽの時間 Me, Empty」:
外資系のアメリア大手の投資ファンドに勤めるOLの"堀田"。彼女は「かみわら」の常連だったが、ある日会社が破綻した...。
●「おでき A Spot on My Heart」:
地元を出て東京に出てきた"アイコ"。せっかくつかんだ内定を取り消され、バイト先の店長に相談する...。
●「缶椿 A Camellia for you」:
不景気でリストラが行われ、内定取り消しの連絡を押しつけられ"初芝"。人のうわさ話と悪口が好きな会社の人ともなじめない...。
●「ひなたを歩こう Sunny Side of Life」:
ひなたを歩くことが好きな"翔太"は、自分の夢であるワゴン車の弁当屋「ひなた」をオープンさせた。その翔太は事故に遭う...。
●「あまい生活 La Dolce Vita」:
"美香子"が手をつけた"田端"が、社内の若い後輩"真嶋"に乗り換えた。美香子はスイーツ出前をしている友人の"赤松"に頼みごとがあった...。
●「幸せの青くもない鳥 Unblue Blue Bird」:
つきあい始めたけど女癖が悪いことがわかり、"田端"と別れた"(真嶋)衣里"は父親から「男を顔で選ぶな」と言われていた...。
●「独立記念日 Independence Day」:
シングルマザーの"百合子"は飼っていたインコのトコを誤って逃がしてしまった。娘は涙が止まらない。そんなトコを保護していたのが大好きな作家の家だった..。
●「まぶしい窓 Little Home Window」:
夫が余命宣告されて勤めていた保育園を辞めた"侑子"。夫を看取った後、退職祝いでもらった宿泊券を使い高級ホテルに夫婦で予約を入れた...。
●「いつか、鐘を鳴らす日 RQ WDB」:
ホテルベイロイヤルのチャペルで鐘を鳴らすと幸せになれるという都市伝説があるらしい...。
●「川面を渡る風 Riverside Toast」:
父の下で働いていて、ずっと兄のように思っていた"ケンちゃん"と結婚することになった"菜摘"は、N市でのひとり暮らしの家を出て、地元に戻ること...。
これ、様々な境遇からしがらみとか逡巡とかをなんとか断ち切って、独立していく女性たちを描いたもの。どの話も潔くて気持ちいいんだけど、「ひなたを歩こう Sunny Side of Life」が特によかった。原田マハらしい本だった。
cf. 原田マハ 読破 List
- カフーを待ちわびて (2006)
- 一分間だけ (2007)
- ランウェイ☆ビート (2008)
- ごめん Where Life Goes (2008)
- さいはての彼女 (2008)
- キネマの神様 (2008)
- 花々 (2009)
- 翼をください (2009)
- ギフト (2009/2021)
- インディペンデンス・デイ (2010)
- 本日は、お日柄もよく (2010)
- 星がひとつほしいとの祈り (2010)
- 風のマジム (2010)
- まぐだら屋のマリア (2011)
- 永遠をさがしに (2011)
- いと-運命の子犬-/原田マハ(文)・秋元良平(写真) (2011)
- 小説 星守る犬/原田マハ(著)・村上たかし(原作) (2011)
- 楽園のカンヴァス (2012)
- 旅宿おかえり (2012)
- 生きるぼくら (2012)
- いつも一緒に -犬と作家のものがたり-/新潮文庫編集部(編)・檀ふみ・小路幸也・遠藤周作・角野栄子・伊丹十三・鷺沢萠・伊集院静・江國香織・幸田文・久世光彦・小川洋子・佐藤愛子・糸井重里・原田マハ・島尾敏雄・馳星周・小澤征良・山崎豊子・唯川恵(2013)
- ジヴェルニーの食卓 (2013)
- 総理の夫 First Gentleman (2013)
- ユニコーン ジョルジュ・サンドの遺言 (2013)
- 翔ぶ少女 (2014)
- 太陽の棘 (2014)
- 奇跡の人 The Miracle Worker (2014)
- あなたは、誰かの大切な人 (2014)
- 異邦人(いりびと) (2015)
- モダン (2015)
- ロマンシエ (2015)
- 暗幕のゲルニカ (2016)
- デトロイト美術館の奇跡 DIA:A Portrail of Life (2016)
- リーチ先生 (2016)
- 恋愛仮免中/奥田英朗・窪美澄・荻原浩・原田マハ・中江有里 (2017)
- サロメ (2017)
- アノニム (2017)
- たゆたえども沈まず (2017)
- いちまいの絵 生きているうちに見るべき名画 (2017)
- スイート・ホーム (2018)
- フーテンのマハ (2018)
- 常設展示室 Permanent Collection (2018)
- 美しき愚かものたちのタブロー (2019)
- 20 CONTACTS 消えない星々との短い接触 (2019)
- 風神雷神 Juppiter,Aeolus (2019)
- ハグとナガラ (2020)
- <あの絵>のまえで (2020)
- ゴッホのあしあと (2020)
- モネのあしあと (2021)
- リボルバー (2021)
- やっぱり食べに行こう。(2021)
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