「コメンテーター/奥田英朗」を読んだ
最近ご無沙汰の奥田英朗、茅ヶ崎図書館で借りた「コメンテーター」(文藝春秋)について。
これ、17年ぶりの「精神科医 伊良部シリーズ」。それぞれこんなあらすじ。
●「コメンテーター」:
低視聴率にあえぐワイドショーのスタッフの圭介は、母校のつてで美人精神科医をコメンテーターとしてスカウトしようとする。しかし、行き違いから精神科医の伊良部と看護師マユミが出演することに。案の定、ふたりは放送事故寸前のコメントを連発するが...。
●「ラジオ体操第2」:
オフィス機器メーカーの福本克己は、県道で煽り運転の被害に遭い、頭の中で復讐を考えていると過呼吸発作で呼吸困難になってしまう。また、さらに犬の散歩中、公園でスケボーで遊んでいる若者を見かけると、若者たちを説教する想像すると過呼吸発作の症状があらわれる。伊良部総合病院を訪ねた克己は、精神科医 伊良部からアンガーマネジメントができていないと言われる...。
●「うっかり億万長者」:
株のデイトレードで資産10億円を稼いだ河合保彦は、近所の公園で特選幕の内弁当を食べていると、寄ってきた大型犬にソーセージでからかうと犬に指を齧られてしまった。保彦は飼い主の初老の婦人に連れられて伊良部総合病院を訪れる途中で意識を失ってしまう。パニック障害と診断された保彦は伊良部に往診をお願いすることになるが...。
●「ピアノ・レッスン」:
ピアニストの藤原友香は新幹線で東京から大阪に向かう途中、不安になり新横浜で降りてしまう。さらに、音大の先輩の演奏会に招待されると座席が列の中央だったが、その席でじっとしないといけないというプレッシャーに耐えらない。事務所の社長に相談すると伊良部総合病院を紹介される。そこで伊良部から広場恐怖症と診断された...。
●「パレード」:
山形生まれの北野裕也は東京の私大に進学したが、上京したもののコロナの影響で大学の授業はリモートで行われることになった。少しずつ対面授業が増え、クラスでグループができる中、どのグループにも属せなかった。裕也は授業で教授から指された時に頭に血が上り、一言も喋れず、ゼミのタスクチームMTGに参加した時も緊張し、途中で帰ってしまった。伊良部総合病院を訪ねると社交不安障害と診断される...。
この精神科医 伊良部シリーズ、患者が道に迷って、ふとしたきっかけで伊良部の病院に行き、そこでハチャメチャな治療体験をするというもの。ハチャメチャな治療でテキトーな感じのくせに、人のこころに病の核心をドキリとついてくるのがたまらない。なんか鬱屈な日々にピッタリな本だった。
cf. 奥田英朗 読破 List
- B型陳情団 (1990)
- ウランバーナの森 (1997)
- 最悪 (1999)
- 邪魔 (2001)
- 東京物語 (2001)
- イン・ザ・プール (2002)
- 延長戦に入りました (2002)
- マドンナ (2002)
- 真夜中のマーチ (2003)
- 空中ブランコ (2004)
- サウスバウンド (2005)
- ララピポ (2005)
- ガール (2006)
- 町長選挙 (2006)
- 家日和 (2007)
- オリンピックの身代金 (2008)
- 用もないのに (2009)
- 無理 (2009)
- 聖なる夜に君は/奥田英朗・角田光代・大崎善生・島本理生・盛田隆二・蓮見圭一(2009)
- 純平、考え直せ (2011)
- 我が家の問題 (2011)
- あの日、君と Boys/ナツイチ制作委員会(編)・伊坂幸太郎(著)・井上荒野(著)・奥田英朗(著)・佐川光晴(著)・中村航(著)・西加奈子(著)・柳広司(著)・山本幸久(著) (2012)
- 短編工場/浅田次郎・伊坂幸太郎・石田衣良・荻原浩・奥田英朗・乙一・熊谷達也・桜木紫乃・桜庭一樹・道尾秀介・宮部みゆき・村山由佳 (2012)
- 噂の女 (2012)
- 沈黙の町で (2013)
- 田舎でロックンロール (2014)
- ナオミとカナコ (2014)
- 我が家のヒミツ (2015)
- 向田理髪店 (2016)
- ヴァラエティ (2016)
- 恋愛仮免中/奥田英朗・窪美澄・荻原浩・原田マハ・中江有里 (2017)
- 罪の轍 (2019)
- コロナと潜水服 (2020)
- コメンテーター (2023)
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