Thursday, June 14, 2018

「物語のおわり/湊かなえ」を読んだ

Kanaeminato_monogatarinoowari たまーに読んでる湊かなえ。三茶Tsutayaで買って読んでみた「物語のおわり」(朝日文庫)について。
 こんなあらすじ。絵美は小さな山間の街で生まれ、両親は"ベーカリー・ラベンダー"というパン屋を営んでいた。両親が忙しいので、小さい頃から山の向こうの世界を想像しながら時間を潰していて、自分の物語を空想しては同級生の小野道代に話し、小説として書いていた。そんな彼女が書いた未完の物語「空の彼方」は、北海道で旅をする人々の間に手渡されていく...。
 妊娠3ヶ月で癌が発覚した人、父親の死を機にプロカメラマンになる夢をあきらめようとする人、志望した会社に内定が決まったが自信の持てない人、娘のアメリカ行きを反対する人、仕事一筋に証券会社で働いてきた人...様々な悩みを抱えながら、人々は北海道へ旅をする。その旅の途中で未完の物語「空の彼方」を手渡されるというつながった短編集がこれ。北海道の雄大な自然を感じつつ、終わりのない物語「空の彼方」をそれぞれの人がそれぞれの感じ方をしていくんだけど、最後の最後に伏線が回収されて、本当の"物語のおわり"が見えたときは、なんか晴れ晴れとした気持ちになれた。
 湊かなえ作品って、いやーな読後感で終わるのが自虐的で好きなんだけど、こんな気持ちいい終わりかたの作品もよかったです。

cf. 湊かなえ 読破 List
- 告白 (2008)
- Nのために (2010)
- 夜行観覧車 (2010)
- 往復書簡 (2010)
- サファイア (2012)
- 白ゆき姫殺人事件 (2012)
- 物語のおわり (2014)
- 絶唱 (2015)
- リバース (2015)

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Wednesday, June 06, 2018

「レディ・ジョーカー/高村薫」を読んだ

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Kaorutakamura_ladyjoker3 タイトルだけは知ってて、なんか読んでみたいとずっと思ってた高村薫の「レディ・ジョーカー」<//>(新潮文庫)。この1か月、世田谷中央図書館で借りてイッキに読んでみた。
 こんなあらすじ。薬局店主、警視庁刑事、トラック運転手、旋盤工、在日朝鮮人の信用金庫職員の5人は競馬場で知り合う。それぞれ5人は社会に対する言いようのない不満を抱えており、1兆円企業である日之出ビールの社長"城山"の誘拐を企てる。「身代金は20億。人質は350万キロリットルのビール」、合田警部補は事件を追う...。
 これ、3冊で約1,500ページを超える超大作。グリコ森永事件を題材に、被差別部落問題、企業テロ、総会屋への利益供与、仕手筋による株価操作といった問題が浮上し、犯人グループ、日之出ビール、警察、検察、マスコミ、地下金融グループそれぞれが複雑に絡み合いながら物語が進んでいく。結末に向けて、その社会問題・経済犯罪が複数展開するためストーリー構成は重厚だし、主要登場人物も多く、複数の登場人物の視点が切り替わりながら、話が展開していくため、ほんと気が抜けない。
 しっかし、総会屋と対峙する大企業の影の部分や、警察と検察の摩擦、マスコミの加熱報道の裏側など社会の見えない部分がこれでもかと描かれていて、ほんと読みごたえがあった。いやー読書したっていう読後の3冊だった。

cf. 高村薫 読破 List
- レディ・ジョーカー (1997)

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Tuesday, May 29, 2018

「キャロリング/有川浩」を読んだ

Hiroarikawa_kyaroring たまに読んでる有川浩。世田谷中央図書館で借りて読んでみた「キャロリング」(幻冬舎文庫)について。
 こんなあらすじ。クリスマスに倒産が決まった子供服メーカーで働く"大和俊介"は、同僚で元恋人の"柊子"に秘かな思いを残していた。そんな2人を、会社に併設された学童に通う小学生の"航平"が頼ってきた。両親の離婚を止めたいという航平の願いを叶えるため、彼らは別居中の航平の父親を訪ねる...。
 これ、クリスマスに向けて、逆境の中でもささやかな奇跡の連鎖が起きる物語。後半の暴力シーンにはちょっと驚いたけど、どの登場人物も憎めない人たちばかり。自分が一番つらいとか、不幸自慢とかをしたいわけじゃないんだけど、ついつい泣き言をいいがちな中、「不幸の比べっこしたってしょうがないだろ。」という言葉はいい。また、すべてがハッピーエンドでなかったのも個人的にはよかったと思う。
 有川浩の小説、ジワジワ好きになってきた。

cf. 有川浩 読破 List
- 図書館戦争 図書館戦争シリーズ(1) (2006)
- 図書館内乱 図書館戦争シリーズ(2) (2006)
- レインツリーの国 (2006)
- クジラの彼 (2007)
- 図書館危機 図書館戦争シリーズ(3) (2007)
- 図書館革命 図書館戦争シリーズ(4) (2007)
- 阪急電車 (2008)
- 別冊図書館戦争I 図書館戦争シリーズ(5) (2008)
- 別冊図書館戦争II 図書館戦争シリーズ(6) (2008)
- ヒア・カムズ・ザ・サン (2011)
- 空飛ぶ広報室 (2012)
- キャロリング (2014)
- アンマーとぼくら (2016)

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「忍びの国/MUMON-THE LAND OF STEALTH」を観た

Shinobinokuni 以前読んだことがある和田竜の「忍びの国」。この原作が映画化されたので映画版「忍びの国/MUMON?THE LAND OF STEALTH」(2017/Cinema)も観てみた。
 こんなあらすじ。織田信長が天下統一に向かって突き進む戦国時代、忍びの国として名高い伊賀が舞台。超人的な戦闘能力を誇り、虎狼の族と呼ばれる伊賀忍者の中でも特に腕の立つという"無門"(大野智)は、怠惰な日々を過ごしては妻"お国"(石原さとみ)に稼ぎのなさを叱責されていた。ある日、織田信長の次男"信雄"(知念侑李)は、父ですら手出しするのを恐れていた伊賀への侵攻を独断で開始する。無門に弟を殺されて伊賀への復讐を果たそうとする"下山平兵衛"(鈴木亮平)、伊賀の重鎮"百地三太夫"(立川談春)や"下山甲斐"(でんでん)をはじめとする忍者達の思惑や野望も入り乱れる戦いに、いつしか無門ものみ込まれていく...。
 これ、金のために動く伊賀忍者が狡猾な策を練って思い通りに相手を行動させ、戦う忍術が面白いし、武士と戦う中で忍びのものが持っている倫理観や価値観が、世の中とまったく異なることが面白い。これを大迫力の映像とアクションと音楽で表現していて、まるでなにかのプロモビデオを観てるようだった。NO MORE 劣化実写化!!と思う映画が多い中、大野智が演じた無門もイメージ通りだったし、なかなか楽しめた時代劇だった。

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Tuesday, May 22, 2018

「STAR WARS THE JEDI PHILOSOPHY-スター・ウォーズ ジェダイの哲学 フォースの導きで運命を全うせよ/Jan-Ku Yaha-ジャン=クー・ヤーガ」を読んだ

Jedinotetsugaku ニコタマ蔦谷家電を徘徊中にひっかかったSW本「STAR WARS THE JEDI PHILOSOPHY-スター・ウォーズ ジェダイの哲学 フォースの導きで運命を全うせよ/Jan-Ku Yaha-ジャン=クー・ヤーガ」(学研)について。
 これ、著者であるJan-Ku Yahaが銀河共和国を生き抜いてきたJediという設定で、パワダンである弟子に真の自分を見つける方法、ダークサイドの正体、人生にバランスをもたらす生き方などを伝えるという異色な哲学本。
 確かにSWって、楽してハラハラするSFアクション映画である一方、「フォースを使え、手を放すんだ!」「やるか、やらぬか。やってみるはない」といったセリフがあるよう精神性や哲学をうたった物語でもある。特に旧3部作ではルークの成長を通して「慈悲」「愛」「許し」が語られたのに対し、新3部作では「恐れ」「執着」「欲望」などがアナキンの転落を通して語れていて、誰もが持つ慈悲と恐れに対してどうやって折り合いをつけるのかということを訴えていた。
 バランスと調和について教えてくれる自己啓発本だった。

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Monday, May 14, 2018

「億男/川村元気」を読んだ

Genkikawamura_okuo 馬事公苑Tsutayaを徘徊していて、読んでみたくなった川村元気の「億男」(文春文庫)について。
 こんなあらすじ。弟の借金を抱え、妻子にも去られ、キツキツの生活をしていた図書館司書の"一男"は、たまたまひいたくじ引きであてた宝くじで、3億円を当ててしまう。浮かれる間もなく不安に襲われた一男は、「お金と幸せの答え」を求めて大富豪となった大学時代の親友"九十九"のもとを15年ぶりに訪れる。だがその直後、九十九と3億円が消え、その行方を追って、一男の冒険が始まった...。
 これ、億という金をいきなり手にした男はどうなってしまうのかという小説であり、実はソクラテス、ドストエフスキー、福沢諭吉、ドナルド・トランプなどなどの名言も載ってる実用書であったりする。金と人間の生々しい話がじわじわと伝わってきて、お金がとんでもない怪物に思えてくるし、小説としてお金持ちになることが本当に幸せなのかということが書かれている。それにしてもチャップリンが残した名言「人生に必要なのは勇気と想像力、そして少しのお金だ」には、なるほどなぁって思えた。
 これ映画化されるみたいだけど、不思議な1冊だった。

cf. 川村元気 読破 List
- 世界から猫が消えたなら (2012)
- 億男 (2014)

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Tuesday, May 08, 2018

「黒笑小説/東野圭吾」を読んだ

Keigohigashino_kokushoshosetsu たまに読んでる東野圭吾。世田谷中央図書館で借りて読んでみた「黒笑小説」(集英社文庫)について。
 これ、タイトル通り東野圭吾が書いた「黒い笑い」を集めたシートショート。それぞれこんなあらすじ。
・「もうひとつの助走」: 
 文学賞受賞者発表当日、小説家"寒川心五郎"の受賞を待つべく、各出版社の編集者達は店に集まった。寒川は消極的なことを言いながらも賞が欲しくてたまらない。編集者達は寒川の受賞を信じているというが、内心は無理だと思っている。そんな時に電話が鳴った...。
・「線香花火」:
 新人賞に応募し、見事受賞した新人作家の"熱海圭介"。受賞したことで有頂天になった熱海だったが、勤務先の上司の反応は変わらず、取引先からも馬鹿にされ、出版社の編集者達も無関心だった...。
・「過去の人」:
 かつて新人賞を受賞した新人作家の"熱海圭介"は、作家が集まるとあるパーティに招待された。受賞に誇りをもっている熱海は、そのパーティーで目立とうと頑張ったが...。
・「選考会」:
 第1回灸英社推理小説新人賞の選考委員に選ばれた作家の"寒川心五郎"は、うれしくてたまらない。同じく選考委員に選ばれた作家の友引三郎と轟木花子とともに、候補作の選考を始めるが、出版社には別の目論見があった...。
・「巨乳妄想症候群」:
 なぜかあらゆるものが巨乳に見えてしまうという巨乳妄想症候群に陥ってしまった私。友人の精神科医タムラに見てもらうが、治らず、症状は別の方向にいってしまう...。
・「インポグラ」:
 飲むとインポテツになる薬「インポグラ」が発明された。そのインポグラを開発した友人から、なんとかこの薬の有効な使い道を考えてくれと広告代理店の主人公は頼まれた...。
・「みえすぎ」:
 遺伝的な特殊能力のおかげで、突然空気中の見えない塵や埃など普通の人には見えない微小な粒子までも見えるようになってしまった俺...。
・「モテモテスプレー」:
 女性にもてない"タカシ"は、吹きかけるとモテモテになるスプレーを手に入れる。しかし、そのスプレーの効果は持続時間はだんだん難しくなっていくほど、タカシの「もてない度」は強力だった...。
・「シンデレラ白夜行」:
 今日もシンデレラは、継母や姉達にいじめられていたという童話「シンデレラ」のパロディ。
・「ストーカー入門」:
 "華子"にふられた僕は、追跡、つきまといから彼女が出すゴミあさりまでしぶしぶとストーカーをやらされる...。
・「臨界家族」:
 "川島哲也"は、娘の"優美"からTVで放送されているキャラクター商品を買って買ってと急かされていた...。
・「笑わない男」:
 お笑い芸人コンビの"拓也"と"慎吾"は、まったく笑わないホテルのボーイをなんとかして笑わせようと悪戦苦闘する...。
・「奇跡の一枚」:
 それほど綺麗ではない顔立ちの大学生の"遥香"は、ある日、山中湖でのゼミ合宿で自分とは思えないほど綺麗な自分の写真を手に入れる...。

 まずあの理系で理論的でクソ真面目そうな東野圭吾が、こんなブラックでくだらない短編を書いていたことに衝撃を受ける。まさに奥田英朗ぽいなって思って読んでいたら、最後の解説が奥田英朗だったのも笑える。で、個人的よかったのは、文壇事情を皮肉たっぷりに書いた4作「もうひとつの助走」と「線香花火」と「過去の人」と「選考会」、したたかな女とデリケートな男という構図がおもろい「インポグラ」、望むものは自分の知恵と実力で積極的に獲りに行くというしたたかな童話「シンデレラ白夜行」、くどくてめんどくさい「ストーカー入門」、キャラクターライセンスビジネスの恐怖を描いた「臨界家族」、心霊写真オチの「奇跡の一枚」あたり。
 この東野圭吾の「○笑小説」シリーズは他にも3作あるらしい。ちょっと読みたくなった。

cf. 東野圭吾 読破 List
- ブルータスの心臓 (1989)
- 回廊亭殺人事件 (1991)
- 美しき凶器 (1992)
- 分身 (1993)
- パラレルワールド・ラブストーリー (1995)
- 悪意 (1996)
- 秘密 (1998)
- 白夜行 (1999)
- 予知夢 (2000)
- 嘘をもうひとつだけ (2000)
- レイクサイド (2002)
- 時生 (2002)
- 幻夜 (2004)
- さまよう刃 (2004)
- 容疑者Xの献身 (2005)
- 黒笑小説 (2005)
- 赤い指 (2006)
- 流星の絆 (2008)
- 聖女の救済 (2008)
- パラドックス13 (2009)
- カッコウの卵は誰のもの (2010)
- プラチナデータ (2010)
- 白銀ジャック (2010)
- 麒麟の翼 (2011)
- 真夏の方程式 (2011)
- マスカレード・ホテル (2011)
- 虚像の道化師 ガリレオ7 (2012)
- ナミヤ雑貨店の奇蹟 (2012)
- 夢幻花 (2013)
- 疾風ロンド (2013)
- 祈りの幕が下りる時 (2013)
- 虚ろな十字架 (2014)
- マスカレード・イブ (2014)
- 禁断の魔術 (2015)
- 天空の蜂 新装版 (2015)

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Wednesday, May 02, 2018

「ノーマンズランド/誉田哲也」を読んだ

Tetsuyahonda_nomansland 結構読んでる誉田哲也。"姫川玲子シリーズ"の第8弾「ノーマンズランド」(光文社)について。
 こんなあらすじ。またしても"林"という同僚の殉職を経験し、心身に疲弊の残る"姫川玲子"が入ったのは、葛飾署管内で起こったひとり暮らしの女子大生がマンションの部屋で殺害されるという殺人事件捜査本部だった。姫川は隣の署から応援に来たかつての部下"湯田康平"とコンビを組み、被疑者の男性の住所を特定した矢先、本所署がこの男を逮捕して別件の殺人事件で取り調べをしていることを知る。情報が流れてこないと本所署の様子がおかしいと感じた姫川は、掟破りにもこの事件の担当検事である"武見諒太"に連絡を取り、内々に手に入れた男性の遺体写真を調べているうち、驚くべき事実を知る...。
 今回の"姫川玲子シリーズ"は北朝鮮による拉致事件への強い怒りが込められている。自衛隊の意義とか、近隣諸国との外交とか、憲法9条の解釈とか、日本が抱える闇に姫川が対峙していくのが面白かった。そしてガンテツ勝俣の存在感は抜群で、警察と政治家の癒着をドロドロと描かれていた。
 なんだかんだで毎回面白い"姫川玲子シリーズ"だった。

cf. 誉田哲也 読破 List
- 妖の華 (2003)
- アクセス (2004)
- 吉原暗黒譚 (2004)
- 春を嫌いになった理由 (2005)
- 疾風ガール (2005)
- ジウI 警視庁特殊犯捜査係 (2005)
- ストロベリーナイト (2006)
- ジウII 警視庁特殊急襲部隊 (2006)
- ジウIII 新世界秩序 (2006)
- 月光 (2006)
- ソウルケイジ (2007)
- 武士道シックスティーン (2007)
- 国境事変 (2007)
- シンメトリー (2008)
- 武士道セブンティーン (2008)
- ヒトリシズカ (2008)
- ガール・ミーツ・ガール (2009)
- 武士道エイティーン (2009)
- ハング (2009)
- インビジブルレイン (2009)
- 主よ、永遠の休息を (2010)
- 世界でいちばん長い写真 (2010)
- 歌舞伎町セブン (2010)
- 感染遊戯 (2011)
- レイジ (2011)
- ドルチェ (2011)
- あなたの本 (2012)
- 誉田哲也 All Works/誉田哲也(監修) (2012)
- 痛み/貫井徳郎・福田和代・誉田哲也 (2012)
- あなたが愛した記憶 (2012)
- 幸せの条件 (2012)
- ブルーマーダー (2012)
- ドンナ ビアンカ (2013)
- 増山超能力師事務所 (2013)
- Qrosの女 (2013)
- ケモノの城 (2014)
- 黒い羽 (2014)
- 歌舞伎町ダムド (2014)
- インデックス (2014)
- 武士道ジェネレーション (2015)
- プラージュ (2015)
- 硝子の太陽N-ノワール (2016)
- 硝子の太陽R-ルージュ (2016)
- 増山超能力師大戦争 (2017)
- ノーマンズランド (2017)

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Friday, April 27, 2018

「キッドナップ・ツアー/角田光代」を読んだ

Mitsuyokakuta_kidnaptour 最近ごぶさたの角田光代。駒沢Book Offで買って読んでみたきっと定番な「キッドナップ・ツアー」(新潮文庫)について。
 こんなあらすじ。5年生の夏休みの第1日目、私はユウカイされた。犯人は2か月前から家にいなくなっていたおとうさん。だらしなくて、情けなくて、お金もない。そんなおとうさんに連れ出されて、私の夏休みは一体どうなっちゃうの? 海水浴に肝試し、キャンプに自転車泥棒。ちょっとクールな女の子ハルと、ろくでもない父親のひと夏のユウカイ旅行...。
 ひねた娘とダメおやじのロードムービー的なひと夏の物語。不器用な関係がじわじわと寄り添っていくんだけど、その過程が微笑ましい。児童文学ちゃあ児童文学なんだけど、実はおっさんの目線で描かれている。それにしてもこのユウカイを通じて、父親が母親に持ち掛けた取引は何だったんだろ。さわやかな1冊だった。

cf. 角田光代 読破 List
- キッドナップ・ツアー (1998)
- ちいさな幸福 All Small Things (2004)
- ぼくとネモ号と彼女たち (2006)
- 八日目の蝉 (2007)
- ロック母 (2007)
- 三面記事小説 (2007)
- 森に眠る魚 (2008)
- 聖なる夜に君は/奥田英朗・角田光代・大崎善生・島本理生・盛田隆二・蓮見圭一 (2009)
- 紙の月 (2012)

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Wednesday, April 25, 2018

「燻り/黒川博行」を読んだ

Hiroyukikurokawa_kusuburi 散歩中、Tsutaya馬事公苑で買って読んでみた黒川博行の「燻り」(角川文庫)について。
 これ、燻(くすぶ)り続ける男達が起こした9つの事件を描いた短編集。うだつの上がらない組員がチャカを預けられつかまる「燻り」、パチンコ点を強請る2人組の「腐れ縁」、ある社長令嬢の不倫現場を隠し撮りしたビデオでその会社を強請る「地を払う」、同日同時刻に同じ手口で侵入した強盗容疑者の容疑者となった空き巣の「二兎を追う」、古物美術品売買から過去の犯罪が露呈する「夜飛ぶ」、見つかった頭蓋骨で偽装する住職夫婦「迷い骨」、妻と別れたい画家の大学教授の「タイト・フォーカス」、男と共謀し資産家の夫を自殺に見せかける若妻の「忘れた鍵」、そしてデート嬢殺害の容疑をかけられた高校教師の「錆」...。
 どれもこれも関西アンダーグラウンドで燻(くすぶ)り続け、蠢く男たちがシノギを削る9つの話が収録されている。何をやっても上手く行かず、ツいてない落ち目状態をサスペンス風に謎解き風に描かれていんだけど、人間味を感じさせる小悪人がいい。

でもやっぱり面白いのは関西弁の会話たち。
「分かった。100や。100万出そ」
「なんとセコい取引や。子供の飴代やないんでっせ」
「300や。それで手を打と」
「ねえ、新井さん、バナナの叩き売りとちがうんやで」
「500。これがいっぱいや」
「もうええ。よう分かった。ディスクの使い途はおれが考える。2度と電話はかけへん」
「くそっ、1千万や」──(「腐れ縁」より)

たまーに読みたくなる黒川博行作品だった。

cf. 黒川博行 読破 List
- 封印 (1992)
- 燻り (1998)
- 後妻業 (2014)

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